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計算生物学グループ

計算生物学グループ

公共データと計算科学による組織の3次元構造と脳血管老化の解明

研究概要

計算生物学グループでは、爆発的に増え続ける公共の遺伝子発現データを計算科学の力で読み解き、組織がどのように構成され、加齢や疾患でどう作り変えられるのかを大規模に明らかにする研究を進めています。とくに力を入れているのが、組織の中での遺伝子発現を「どこで」起きているかを保ったまま計測する空間トランスクリプトームの解析ツール開発であり、これを脳血管をはじめとする組織の理解へつなげています。私たちは、公共データを大規模に解析するドライ解析と、共同研究による実験的検証(ウェット)という両輪でこの問いに取り組み、そのために必要な解析ツールの開発にも自ら取り組んでいます(図1)。

fig ot soft plan

計算生物学グループの研究概要

図1 計算生物学グループの研究概要。連続切片の空間トランスクリプトームを用いて、組織の3次元構造を比較・可視化するための解析基盤を開発している。これを軸に、組織の3次元再構成・相同部位の比較・アノテーション転写を支える。公共データの統合基盤を用いた大規模メタ解析と合わせ、ドライ解析が生む反証可能な仮説を共同研究の実験(ウェット)で検証し、結果を再び解析へ還す両輪体制をとる。

空間トランスクリプトームから組織の3次元構造を読み解く

空間トランスクリプトームは、組織の中で遺伝子発現が「どこで」起きているかを保ったまま計測する技術で、近年の生命科学を大きく変えつつあります[1]。一方で、一回の実験で得られるのは多くの場合、組織を薄く切った一枚の切片(2次元)です。組織が本来もつ3次元の構造を調べたり、複数の試料で同じ解剖学的部位を比較したりするには、連続切片を計算機上で扱いやすい形に整理し、位置ずれやデータのばらつきを考慮しながら解析する必要があります。

私たちが現在開発を進めている解析ツールは、連続切片を用いて組織の3次元構造を比較・可視化するための解析基盤です。切片ごとの位置ずれやデータのばらつきを考慮しながら、3次元再構成、相同部位比較、アノテーション転写に使いやすい形へデータを整理します。現在、公開データを用いて動作確認を進め、幅広い応用に向けて評価を整理しています。

公共データを統合する解析基盤

大規模なメタ解析には、GEO や SRA などに散在する公共データを取得・標準化・統合する基盤が欠かせません。グループでは、こうした一連の処理を一行のコマンドで実行できる Celline[5] などの公共データ統合基盤を整備してきました。これらを用いれば、たとえばヒト脳の多数の公開シングル核 RNA-seq データを統合し、細胞型ごとの加齢の指標を構築するといった解析が可能になります。空間トランスクリプトームの解析と組み合わせることで、脳血管が3次元構造と加齢の両面からどのように変化するのかに迫ります。

解析と実験の両輪

計算解析が示すのは、あくまで反証可能な仮説です。私たちは、その仮説を実験グループとの共同研究で検証する「両輪」の体制を重視しています。たとえば、複数種の公共血管データを横断的に解析し、血管内皮や血管壁細胞に関する候補分子・候補表現型を抽出しています。現在、こうした候補を局在や機能の面から確かめる実験プロトコルとして、血管生物学の共同研究者へ提案しています。同様に、血管を支える細胞の加齢変化についても、将来的な実験検証・共同研究を視野に入れています。計算が生む予測を実験で確かめ、その結果を再び解析へ還す。この循環を通じて、脳血管をはじめとする組織がどのように老い、疾患へと向かうのかを描き出すことを目指しています。

私たちが目指すもの

空間トランスクリプトームをはじめとする公共データから組織の構造と変化を読み解く解析ツールの開発、それを用いた大規模な解析、そして実験的検証。この三つを一体とした取り組みによって、脳血管が3次元構造と加齢の両面からどう変わるのかを明らかにし、開発したツールを広くコミュニティへ公開していくこと。これが計算生物学グループの目標です。

参考文献

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