学生向けの研究室Q&A(2014年10月更新)
1.「生物物性科学」とは?「生命医科学」との関連は?
あまり聞き慣れない言葉だとは思いますが、「生命に関わる物質の物理的・化学的性質を解明する」学問です。特に、固体・溶液の物質が右手と左手のように鏡像関係にある二つの異性体を示す、「キラリティ」という性質に着目して研究を進めています。基礎的な研究分野ですが、近年注目されている再生医療用の生体材料や医薬品の物性をキラリティの観点から解析し、新しい医療技術・創薬技術の開発につなげるという観点で、生命医科学の発展に大きく貢献できると考えています。また朝日研では、神経化学・神経薬理学の観点から分子生物学研究も展開しており、生物物性科学研究との融合を目指しています。
2.学部生のテーマは?
研究室に配属後、まずは基礎的な研修を一通り積みます。学生にはそれぞれに独立したテーマが与えられます。先輩のテーマの手伝いという形ではなく、それぞれが主体的に研究し、成果が出れば学会発表や論文発表を積極的に行っていきます。もちろん、先輩の指導やサポートもありますが、基本的には、自分がその分野の世界トップになるという気概で皆研究を進めています。学部4年生のあいだに自分が出した研究成果を国際学会で発表する、ということも、頑張り次第では可能です。
3.大学院へ進学した方が良いのか?
研究室は、学部3年生までの講義や学生実験の環境とは大きく異なるため、慣れるまでに時間が必要かもしれません。さらに大学院入試や就職活動などがあれば、実際に成果が出始めるまで相応の時間が掛かるはずです。きちんと腰を据えて専門知識を蓄え、研究経験を積み、将来その経験を生かした職業に就きたいのであれば、大学院への進学は必須でしょう。また朝日研は博士課程への進学者が多いことも特徴です。多くの博士課程学生が日本学術振興会特別研究員DC、リーディング大学院学生やRAに採用されるなどして、経済的支援を得ています。
4.数学や物理学の知識は必要か?
生命科学を含むどんな分野であっても、自然科学の研究を進める上でこれらの知識は当然必要です。数学は大学初年度で勉強する微分積分・線形代数、物理学は力学・電磁気学の知識がまずは必須です。さらに、研究を進めるとともに必要となる光学、結晶学、熱統計力学、量子化学などの習得も強く求められます。数学や物理学は学習初期段階での「壁」が比較的高いですが、一旦それを乗り越えてしまえばすんなり進みます。入室の時点で知識が不十分な場合、相当な覚悟が必要です。ただし、研究室内外での研修や勉強会を通じて学習していけば問題ありません。また、生命に関連する物質を扱っているので、生化学・生理学・分子細胞生物学・神経科学・薬理学などの知識も当然必要となります。 さらに、理系の人間にとって日本語の文章作成能力は実は極めて重要です。論文はもちろん、研究計画書や様々な申請書類を書く際には、きちんとした学術的文章の作成能力が問われます。この能力は、研究室を卒業してからも大きく役に立ちます。研究室に入ってから、時間をかけてトレーニングする必要があります。ほとんどの学術論文は英語で書かれており、また国際学会では英語で発表する必要があるので、英語(読む・書く・聞く・話す)の訓練も常時必要です。
5.研究室のレベル・設備は?
研究室が本格的に始動して4年が経過し、研究の成果も少しずつ出始めてきました。業績数で見れば、いわゆる世界のビック・ラボにはまだまだ及びませんが、国内外に誇れるオリジナリティと質の高い研究を展開しています。修士課程の学生が国際学会においてポスター賞や講演賞を受賞し、また、優れた研究業績により修士課程を早期修了、博士課程へ飛び級入学している学生もいます。朝日研では、固体のキラリティに関する研究、計測装置の開発において国内外をリードしています。普段の研究で用いる測定機器はTWIns内にあるものに限らず、西早稲田キャンパス、ASMeW、ナノテクセンター、材研などの学内共同施設も利用しています。またSPring8や広島大学HiSOR、高エネルギー加速器研究機構などの大型シンクロトロン研究施設で実験を行う場合もあります。学生の居室や研究室はTWInsの2Fオープンラボ内と3Fにあり、それぞれの研究を行っています。研究に使用するワークステーション、コンピューターも豊富に保有しています。
6.研究室のスケジュールは?
各自が研究の進捗状況を報告したり重要な文献を紹介するゼミを毎週2時間程度行っています。毎週のゼミは、種々の研究室活動の中で最も重要なものです。また、各研究グループ毎にミーティングを開き、研究の方向性を話し合ったりします。ゼミ合宿は例年8月に大学のセミナーハウスなどで2泊3日に渡って行います。研究室のコアタイムは9:30から18:00で、原則この間は研究活動を行うことが求められます。授業を受けたり、ゼミの準備をしたり、研究計画を練ったり、各自で毎日スケジュールは違います。しかし、周囲と調整しつつ自分のスケジュールを決めていくことは、言うまでもなく社会に出てから必須の能力です。研究室内でも是非実践するようにしてください。
7.研究室の雰囲気は?
研究室発足当時は学生数も少なく、皆で和気藹々という雰囲気でした。現在では人数も増えてきましたが、和気藹々な雰囲気は続いています。しかし、当然ながら学問に対する姿勢は厳しいものでなければならないため、「やるときはやる」は心掛けなければなりません。研究に関して「この程度でいいや」という考え方は、朝日研では通用しません。サイエンスとしての研究の深さや発展性を常に求められるという点で、朝日研は厳しい研究室であると言えるでしょう。ですが、朝日研での研究活動を通じて、将来社会に出たときに大きな武器となる「論理的思考力」「粘り強い集中力」「自分で考え実行する力」など多くのことを身につけることができます。ゼミ発表における学生間の議論も活発であり、サイエンスを追求する雰囲気があります。また、海外の研究者と交流する機会も多いため、英語を使ったコミュニケーションを普段から心掛けています。
8.進路・就職先は?
2013年3月:
(修士卒)博士後期課程進学3名、就職1名
(学部卒)修士課程進学6名(うち1名は他大学院に進学)
2014年3月:
(修士卒)博士後期課程進学5名(うちリーディング大学院学生4名)、就職3名
(学部卒)博士一貫課程進学1名(リーディング大学院)、修士課程進学4名、就職1名
就職先:
(修士卒)生命科学系出版社、地方公務員、サイエンスコミュニケーター
(学部卒)地方公務員
また、リーディング大学院学生として、朝日研から7名(リーディング大学院第1期生4名、第2期生2名、第3期生1名)が選抜されています。
9.朝日研向きのタイプは?
朝日研では研究やその他の活動において自主性が強く求められることが多いため、「自分で頭を使って粘り強く物事を考えられる」人は朝日研向きでしょう。また、一味違ったところから生命科学を研究したい人、理論的な仕組みを考えるのが好きな人、測定機器を自分で作ってみたい人、物質の性質を探求したい人、とにかくガッツがある人は朝日研に向いています。
10.朝日先生からのメッセージ
個性(自分の強み)を伸ばし、足りないと思うところ(弱点)を訓練して克服し、世界で通用する社会人(学者、研究者、ビジネスマンなど)になってほしいと願っています。自分が正しいと思ったことを発言・行動すること、新しいことに挑戦することは大いに推奨しますが、礼節を重んじない、私利私欲しか考えない、不誠実な学生はお断りします。寝食かまわず独創性高い研究に取り組みたい、研究活動を通してリアルなネットワークを作りたい、世界トップレベルの研究室の構築に関わりたいと高い志や心意気、強い意欲をもつ学生を待っています。